其の呼愛の所在 SAMPLE





「……ったく。つくづくテメェら兄弟はそっくりだよ」

なぁ、燐。と呆れたような声に、俺も苦笑を漏らす。

「そりゃ、双子だからな」

似てるのは当然だろ、と答えつつ、とん、と扉を背に凭れ掛かった。この向こう側で、恐らくシュラも同じようにこちらに背を向けているだろう。

「さっきの言葉、あれは雪男だけに言ったんじゃねぇんだぞ」
「あぁ、分かってるって」

ごめんな、と謝れば、小さく舌打ちされた。俺はもう一度、ごめん、と謝りながらも、そっと笑った。

「俺は……大丈夫だよ、シュラ」
「……アタシはビビリ眼鏡と違って素直だからな。その言葉、信じてやるよ」

だから、無茶だけはすんな、とそう言ってくれる彼女に、心の中で感謝をしつつ、そっと目を伏せた。
……これは俺の、我がままだ。


怪我が治りにくい体になってしまった以上、余計な傷は作らないに限る。俺だって、別に好きで傷ついていたわけじゃないし、痛いのは嫌いだ。
それに、メフィストの手引きによって、俺に宛がわれる任務の数は減った。もちろん全くなくなったということはないけれど、でも前に比べると格段に減ったと言って良い。それも、次の満月までの間だろうけれど。
次の満月まで、あと二十日ほどある。それまでに、できるだけ傷を作らないようにしなければ。
………なんて、思っていた矢先のことだ。

「………は、何か傷を作らないようにしなければ、だよ」

俺は数日前の自分を笑った。ひく、と体が引きつって、ジワリと痛みを訴える。その激痛に、俺は顔をしかめた。

「……あー、もう」

じくじくと痛むのは、右の脇腹だ。妙な熱を持っていて、止血しようと抑えた俺の手を赤く染める。
これは……ちょっとまずいかもしれねぇなぁ。
じわじわと減っていく血と、上がっていく熱に浮かされながら、ぼんやりと他人事のように傷を見下ろす。
すると、腕に抱えていた存在がもぞりと動くと、二ィ、と鳴いた。小さな体で必死にこちらを見上げて、心配そうな顔をするソイツに笑いかけながら、ふぅ、と息を吐く。
 どうして、こんなことになったのか。
俺は苦々しく思いながら、少し前のできごとを思い出していた。